研究概要 |
1.子宮体癌における硫酸化糖脂質関連酵素の量的変化に関する解析を目的として、子宮体癌由来培養細胞株であり、免疫染色によりエストロゲン・プロゲステロンセプター(以下ER,PRと略す)の確認されているIshikawa株を用いて、性ホルモンの添加実験を行った。その結果、Ishikawa株に発現される硫酸基転移酵素(以下STと略)、硫酸基分解酵素(以下ASAと略)は、STがホルモン非添加群に対しエストロゲン添加群で約1.6倍、エストロゲン+プロゲステロン添加群で約2倍の活性の亢進を認めた。それに対しASAでは、ホルモン添加群、非添加群に活性の著明な差異を認めなかった。以上により体癌株では硫酸化糖脂質の発現に、STを介した性ホルモンの関与が示唆された。 2.近年、ラットの脳より精製された硫酸化糖脂質スルファチドを抗原として新たに作成されたモノクローナル抗体を用いて、子宮体癌由来培養細胞株Ishikawa株の免疫細胞化学的検索を行った。この結果、培養細胞株の細胞表面に発現する硫酸化糖脂質の存在を明らかにした。今後は、この抗体を用いたFlow Cytometryにて、各種婦人科腫瘍由来培養細胞株の硫酸化糖脂質の発現を検討し、硫酸化糖脂質がいかなる生物機能を有しているかを明らかにしていく。 3.現在、子宮内膜の癌化によって増量する硫酸化糖脂質の血清における変化について検討中である。婦人科癌患者の血清中の酸性糖脂質の組成の変化を健常婦人と比較し、血清中の硫酸化糖脂質と性ホルモンの影響、ならびに細胞の癌化との関連につき検討する。
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