ヒト骨芽細胞様性状を維持しているヒト骨肉腫由来である樹立培養細胞のSaOS-2を用いて、エストロジェン、副甲状腺ホルモン(PTH)、IGF-IおよびIGFBP-4の骨芽細胞機能におよぼす影響について調べ、閉経後骨粗鬆症発症のメカニズム解明を試みた。その結果、エストロジェンはPTHによるIGFBP-4結合活性の上昇を抑制することにより骨芽細胞機能低下を抑制している。すなわち、閉経後は血中エストロジェンが減少し骨芽細胞でのIGF-Iの生合成が低下するとともに、それまでエストロジェンにより抑制されていたPTHによるIGFBP-4結合活性の上昇が増加し、骨芽細胞機能が抑制されることが閉経後骨粗鬆症の発症に関与している可能性が示唆された。さらに、人工閉経後は自然閉経後において血中IGF-IとIGFBP-4の動態を解析し、それぞれと骨密度との関係を調べた結果、IGF-Iは自然閉経後のほうが減少しており、骨密度の低下と有意に相関を示したが、人工閉経後では明らかな相関は認められなかった。いっぽう、IGFBP-4の結合活性は人工閉経後で上昇しており、骨密度との間に強い相関が認められた。すなわち、自然閉経後ではIGF-Iの低下、人工閉経後はIGFBP-4の結合活性の上昇に依存して骨密度が低下しており、この違いによりそれぞれの閉経後で骨密度の低下に差が生じる可能性が示唆された。
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