研究概要 |
卵巣未熟奇形腫の患者2名の初回手術時に採取した新鮮腫瘍組織を用いて組織培養を行なった.その結果,細胞株を1種樹立することに成功し,FU-IT-1と命名した.FU-IT-1株は32回の継代に成功し,その細胞形態はspindleで重層化を示し,免疫細胞化学染色にてneuron specific enolase(NSE),S-100,gliofibrillary acidic protein(GFAP)のマーカーに陽性を示し,本株の神経原性起源が示唆された.本株の無血清培養を試みたが,株化には到らなかった. また,同腫瘍の染色体分析を行なった結果,クローナルな異常として第10番染色体と第20番染色体のトリソミ-が認められた.第20番染色体のトリソミ-は既に我々が樹立した子宮癌肉腫(MMMT)株の一つ(FU-MMT-3)にも認められており,両腫瘍の細胞遺伝学的共通性が示唆された. 分子生物学的分析では,卵巣未熟奇形腫2例中1例にc-myc癌遺伝子の増幅が認められたが,N-mycの増幅は認められなかった. 従って,組織学的類似性を示す卵巣未熟奇形腫とMMMTとの間には,細胞遺伝学的な共通点が存在する可能性が本研究によって明らかとなった.
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