実験動物として成猫12匹を用い、ハロセン麻酔下に脳定位手術にて深部用電極を脳幹聴覚路に挿入し、刺激音の搬送周波数、変調周波数変調度、音圧などのパラメータや位置による変調周波数追随反応、AMFRの波形の変化を検討した。 蝸牛神経核腹側および両側下丘中心核腹側における測定において変調波形様電位の存在を認め、脳組織内における容積伝導状態について検討し、脳表にて固定電位を形成する過程を確認した。これは、頭皮上におけるAMFRがSAM音波形が1次ニューロンを経て半波整流されて上位の聴覚路に伝達される過程で生じると推測される周波数追随反応、FFR波形の歪み成分自体に起源を有するものではなく、AM音に対する処理機構を反映しているものであることの根拠に成りうるものと考えられた。 ゆえにAMFRは周波数特性の高い反応として他覚的聴力検査への応用のみならず、音声ピッチ認識に関する検査法となりうる可能性がある。 また、測定時間を短縮させるため、異なった搬送周波数および変調周波数の組み合わせによる複数のSAM音波形の複合音を刺激音として用い、同時に複数の周波数のオ-ジオグラムの作成を試み、成猫を用いた実験にて単独のSAM音刺激の場合とほぼ同等の結果を得た。 なおARモデルを用いた位相および振幅のスペクトル解析法の導入はハードウエアの制約により今回は見送られた。
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