[目的]椎骨脳底動脈領域の虚血による平衡覚と聴覚の受傷性の相違を解明するために低酸素および椎骨動脈(VA)閉塞の前庭神経核(VN)ニューロン活動に対する影響を蝸牛神経核(CN)ニューロン活動に対する影響と比較して電気生理学的手法を用いて検討した。 [方法]α-chloraloseで麻酔したネコを用い、7極微小ガラス管付き銀製微小電極をVNおよびCNに刺入した。今回購入した電気刺激装置による末梢前庭の電気刺激および音刺激に応じるVNおよびCNニューロンを同定し、それぞれ自発性単一ニューロン活動および刺激にて誘発されるニューロン発火を細胞外に記録した。微小ガラス管にはグルタミン酸拮抗薬を充填し、今回購入したマイクロイオン注入装置を用いて微小電気泳動法により記録ニューロン近傍に投与した。 [結果]5%O2+95%N2の低酸素混合ガスを5分間吸入させた時、ならびに50mmHgの低血圧状態に椎骨動脈を5分間閉塞した時のVNおよびCNニューロン活動の反応について検討した。低酸素吸入時、VNおよびCNニューロン活動は一過性亢進後に低下し消失する2相性の変化を示し、吸入中止後には発火は徐々に増加し吸入前値まで回復した。この発火の亢進はグルタミン酸拮抗薬により抑制された。平均発火消失時間はそれぞれ124秒および188秒で前者が短く、平均発火再現時間はそれぞれ658秒および387秒で前者が長かった。さらにVA閉塞を行うと38.5%のVNニューロンは、低酸素吸入時と同様の反応が認められたが、CNニューロンは全く影響を受けなかった。 [結論]虚血によるVNニューロン活動の変化にはグルタミン酸が関与していると考えられた。又、VNニューロンはCNニューロンに比べて虚血に対して機能的脆弱性が高く、VBIでは前庭症状が優位に生じると考えられた。
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