磁気刺激法を用いて、神経、筋肉より誘発電位を記録し、次のような点につき、検討を行った。 1.顔面神経麻痺症例について、対象症例数60例以上につき経時的に検討した。従来までの電気刺激法と比較すると、反応閾値が高かったが、側頭骨内の顔面神経を刺激することが可能で、磁気刺激法も電気刺激に劣らず有用であった。 2.喉頭に関して、声帯の反射機構である声門閉鎖反射を磁気刺激コイルを頸部に設置して記録した。目標として、上喉頭神経を刺激して、前筋よりの筋電図は記録することが可能であった。また声帯内筋よりの筋電図と促進効果については現在実験中である。 3.磁気刺激の平衡機能への影響に関しては磁界が内耳を含むようにし、さらに反復刺激を行った。刺激の前後で重心動揺計を用いて平行機能への影響を検討した。その結果、左右方向への重心の動揺が有意に認められた。 4.顔面神経と三叉神経に関する脳幹の反射経路と大脳の関与について、正常人と顔面神経麻痺、三叉神経鞘腫、多発性硬化症、ワーレンベルグ症候群の患者を対象として検討した。側頭部を磁気刺激すると顔面神経の内耳道底部が刺激され、また同時に三叉神経終末も刺激されてbrink reflexと同様の反射波を得ることができた。その特徴も症例の病態と矛盾せず、有用な方法と考えられた。また本年度は小型のコイルを使用して、神経の末梢部分を選択的に刺激できるようになった。
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