研究概要 |
1.New Zealand White Rabbitと細菌(肺炎球菌serotype3、黄色ブドウ球菌V8、10^7-10^9CFU)を用い実験的副鼻腔炎モデルを作製後、嗅粘膜を経時的に採取し組織化学的検討を行った。光顕正常時、陽性所見がBowman腺でレクチンPNA,SNA,ニュラミダーゼ処理後のPNA(N-PNA),MAAにて、粘膜上皮でWGA,MAA,N-PNAにて、細胞表面でWGA,PNA,N-PNA,SNA,MAAにて認められた。細菌接種後5日より、Bowman腺、粘膜上皮、細胞表面にてConAの陽性化、SNAの陰性化が認められ、2、3、4、8、12週間屠殺後にても同様な所見が観察された。また、電顕的にもConAの陽性化、SNAの陰性化の所見が示され、嗅覚のreceptorである嗅粘膜細胞表面での複合糖質が炎症時にその分布が変化すると考えられた。この結果は、Stephen.G.ShirleyがConcanavalin A処理後のラット嗅粘膜のelectro-olfactogramでのamplitudeが有意に減少したという報告(Biochem.J.(1987)245,175-184)と関連する興味深い知見であり、複合糖質分布の変化は嗅粘膜機能障害に強く関与すると想定された。 2.鼻疾患にて手術的治療を要すると判断された症例において、患者さん本人の承諾の上で検体を採取した。嗅覚障害を訴えない人嗅粘膜ではレクチンWGAでBowman腺と粘膜上皮、細胞表面に陽性像を示し、MAAが細胞表面で陽性を呈した。一方、呼吸粘膜では細胞表面でSNAで陽性、MAAで陰性を示し、シアル酸複合糖質でも嗅粘膜と呼吸粘膜でその分布に差が認められ両上皮の機能の差が示唆された。今後は慢性副鼻腔炎等にて嗅覚障害を呈する症例においての複合糖質を検討し、正常嗅粘膜および兎の実験結果と対比する予定である。
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