中耳真珠腫は、感染により病巣が拡大し、隣接骨組織を破壊する。これには何らかの刺激を受けて真珠腫上皮が増殖したり、上皮からのサイトカン産生が促されるなどの機序が考えられている。その際の真珠腫上皮に対する刺激として、Tcellなどの浸潤してくる炎症細胞が考えられる。今回は、真珠腫上皮とTcellとの細胞間相互作用に注目し、真珠腫上皮におけるCD40の表出についてin vivoでの検討をした。 真珠腫組織は4人の中耳真珠腫患者より手術に採取した。患者はいずれも男性で、平均年齢は37才であった。PLP固定をした真珠腫組織から6μmの凍結切片を作製し、抗CD40モノクローナル抗体を用いてAPPAP法による免疫染色を行った。 4例中2例の真珠腫上皮ではCD40陽性であった。しかし他の2例では染色性が認められずこれらの真珠腫上皮はCD40陽性例の上皮に比べて増殖像に乏しかった。 これにより真珠腫上皮にCD40が表出している可能性が示唆されたが、現時点では例数が少なく、今後例数を増やす予定である。 また、真珠腫上皮におけるCD40の表出がどのような意味を持つのか、例えば、上皮の増殖を促すのか、GM-CSFやIL-1、TNFなどのサイトカインの産生を促すのかなどを調べる必要があるため、真珠腫上皮の培養によるin vitroの実験を現在行っている段階である。
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