我々は、正常成人20名で垂直方向のOKNの利得、OKANの初期速度(initial velocity=IV)および時定数(time constants=TCs)について以下のごとく検討した。 (1)on timeでデータを解析していける高速演算処理可能コンピューターの導入によってスムースなデータ処理が達成され、正確な計測ができた。 (2)正面座位姿勢で、同一被験者について水平方向および垂直方向にステップ刺激60°/Sの視運動性刺激を、60秒間与えた。各刺激毎にOKNの利得を算出し上向き優位の方向優位性があることを、また、OKANについて解析したところvelocity strage mechanismについて水平方向と垂直方向法と同一である可能性を見いだした。 (2)垂直OKN刺激の時、垂直成分ばかりでなく水平成分も混入することが観察された。この時に回旋成分も混入してくることが充分予想され、重力方向の変化がOKANのIV、TCsに対してどのように現れるかを垂直、水平、回旋の三次元で計測できれば、重力1Gのかかっている地球上で体位変換のOKANに及ぼす影響を検討したものとしては国内外で初めてのものになり、今後の発展性が期待できる結果が得られた。 (2)被験者の姿勢を正面座位、側臥位、懸垂頭位と変化させたときに垂直方向のOKNの利得、垂直OKANのIV、TCsがどのように変化するかを観察した。垂直方向刺激では、OKNの利得、OKANのIV、TCsには上向き優位の上下差があることがわかった〔第52回日本平衡神経科学会発表(1995)。XXIInd Annual Meeting of the International Neuro-otologic and Equilibriometric Society(1995)〕。 (3)この上下差については、耳石器に加わる重力の関与が重要ではないかといわれている〔Wei(1992)、Leliever(1987))。この重力の関与について我々は、被験者の体位をいろいろ変えることによって耳石器に加わる重力の方向を変化させて比較した結果、OKANのIV、TCsはわずかながら影響されるが、この上下差が逆転することはないことがわかった〔25th Neurosciense Abstr: pp136(1995)〕。
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