研究概要 |
本年度の研究概要としては,眼内で特に網膜色素上皮細胞に発現しているα1アドレナリン受容体が薬理学的にもα1Aアドレナリン受容体(従来α1Cサブタイプ受容体)であることを明らかにし,現在論文準備中である.眼内で重要な機能をはたすと考えられるα1Aアドレナリン受容体の薬理学的特性を各種のα1アドレナリン受容体特異的薬物を用いて解析を行った.今回,α1A受容体特異的薬物として,新しい作動薬であるNS-49と拮抗薬KMD-3213を明らかにすることができた.また,α1Aアドレナリン受容体にはC末端部位の長さが異なるsplice variantのクローンが,既に申請者らのグループがクローニングしたα1A受容体以外に2つ存在することを明らかにした(α1C-2,α1C-3).各α1A受容体を発現した細胞を用いた機能解析では,splice variantのクローンも従来発表したα1A受容体と同じ様な薬物親和性をもち,細胞内情報伝達系としてはいずれもホスホリパーゼC/カルシウム系にカップルすることが明らかになった.さらに,α1アドレナリン受容体は従来細胞内情報伝達系としてホスホリパーゼC/カルシウム系が主体であるとされてきたが、アデニル酸シクラーゼ/cAMP系も直接活性化することを初めて明らかにした.本研究によるα1アドレナリン受容体の組織分布・構造・薬理学的特性・機能の解析結果は,眼科臨床に応用できる新たなα1アドレナリン受容体特異的薬物の開発へ結び付く足掛りになると考えられる.
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