研究概要 |
網膜変性、特に加齢性黄斑変性症では微量元素の関わりが注目されている。Mg,Cuの網膜中濃度変化は加齢性黄斑変性症において新生血管の発生、進展に関係すると言われている。網膜色素上皮のメラニン顆粒にはS,Zn,Ca,Fe,Cuなどが高濃度に含有されていることがエネルギー分散型X線分析装置EDSによって確認されつつある。今回、我々はEDSの100〜1000倍の検出感度を持つイオン顕微鏡secondary ion mass spectrometry(SIMS,CAMECA IMS6F)を用い黒色マウス網膜色素上皮のメラニン顆粒の分析を試みた。眼球壁ごとの網膜色素上皮をDaifron‐13で凍結、マイクロウエーブ照射しクリオスタット内で10μmに薄切し、分析用カーボン試料台につけて空気乾燥しカーボン蒸着した。SIMSにて切片表面の光顕像はCCDカメラで観察し、イオン像はO^<2+>イオン像、加速電圧15KeV,2次イオンビームは4.5KeVで観察した。2次イオン像はresistive anode encoder(RAE)でえた。EDSで確認されている元素の他にLi,Be,Rbが検出されている。SIMSは元来、理工系の元素分析装置であるが生体材料の微量元素分析においても有用であることが示唆される。今後は、RCSラット用い生後数週別の網膜色素上皮のイオン元素分析を行い網膜変性と元素変動の関連を検討する予定である。また、これら元素の機能についても考察する。
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