研究概要 |
(1)P53ノックアウト・マウスのホモザイゴ-トのE14〜E18の予定神経性網膜組織を摘出し、Eagle's minimun essential mediumにより培養した。培養開始直後は神経細胞が散見されたが、約2ヶ月で神経細胞は見いだせなくなり、よく増殖する上皮様の細胞のみが残った。正常マウスの培養ではこの時点でほとんど培養可能な細胞は残らないので、P53ノックアウト・マウスにおける特殊な状況であると思われた。これらの細胞群をクローニングした結果、20種を越える株細胞の単離に成功した。このうち、いくつかの株においては、細胞密度の変化等の培養環境の操作で神経突起様の形態を示した(発表準備中)。しかしながら、種々の神経栄養因子の添加等の操作ではこの細胞形態の変化をコントロールできず、いまだ明確な神経細胞への誘発条件は見いだされていない。とにかく、これらの細胞株のうちいくつかは神経細胞への分化能を有していると考えられ、現在も誘導条件の探索を続けている。 (2)網膜神経節細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体C38の単離に成功し、既に学術論文として発表予定である(Wakabayashi,Fukuda & Kosaka,Vision Research,印刷中)。本抗体が認識する抗体蛋白分子をコードするcDNAの単離にも成功した(投稿準備中)。現在は本分子の生理機能を同定するために培養細胞への遺伝子導入の技術を用いて進めている。さらに本抗体と蛍光色素による2重染色法を使用して、視神経切断端への末梢神経移植後のラットに対して軸索を再生している神経節細胞と軸索は再生していないが生存している神経節細胞を染め分けることに成功し、神経栄養因子等の視神経再生に対する効果の細かな評価に役立つことを報告した(Wakabayashi,Fukuda & Kosaka,Brain Research,印刷中)
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