生後8〜12週令の成熟ウイスターラットを用い、坐骨神経の移植および架橋手術を行なった。ベントバルビタール腹腔内麻酔を施し、眼窩内で切断した片側視神経の眼球側断端へ、同一個体より摘出した約3cmの坐骨神経片をつないだ。移植神経片は側頭筋上にはわせ、その遊離端をアンカーし手術を終えた。移植神経片の中を再生軸索が伸展する期間を4週間もうけた後、同様の麻酔下で後頭部の骨を開窓し、移植と同期の上丘を露出するために大脳皮質を一部吸引除去した。この上丘浅層へ移植神経の遊離端を刺入し、同時に対側視神経を切断して架橋手術を終了した。6ヶ月シナプス再形成のために動物を飼育したのち、移植手術の成功の有無をスクリーニングするために、移植動物が明暗弁別に基ずく学習を獲得するかどうか行動実験を行なった。装置は中央を板で仕切り、動物が左右の部屋を自由に移動できるような21×29×19cmのシャトル箱を作成した。条件刺激は白熱灯を点滅させて刺激間間隔3秒を設け、続いて床から電気ショックを無条件刺激として与えた。試行間間隔は平均60秒のランダムとして、1日50試行の訓練を3日間行なった。動物の部屋間の移動は赤外線センサーによって検出し、刺激および反応はコンピューターで記録した。その結果正常および片眼ラットでは回避反応率が上がり、3日目に約80%を示した。しかし今回の移植ラットは正常のような学習曲線を示さず、Blind群と区別できる動物がなかった。今後さらに、後頭葉大脳皮質を最大限に温存しつつ上丘へ架橋手術をほどこすように技術を改良し、行動実験でスクリーニングできる動物を作成する。
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