研究概要 |
屈折異常(近視,遠視,乱視)に対して,近年積極的に屈折矯正角膜手術が行われている。その手段としては,ダイアモンドナイフを用いる角膜切開とエキシマレーザーやホルミウムヤグレーザーを用いるレーザーによる手術である。正常な角膜に対して手術侵襲が加えられた時に,角膜でどのような反応が生じ,創傷治癒がどのように進むかを知ることは必須の情報である。ホルミウムヤグレーザー照射後、H-E染色による組織学的検討では1日後に、照射領域の角膜上皮に欠損は生じなかった。照射部実質の角膜実質細胞が消失し無細胞領域となっていた。実質コラーゲン線維の屈曲および線維間の間隙の拡大が観察され、角膜実質がレーザー照射により収縮していることが示唆された。3日後には,照射部に角膜実質細胞の存在が確認された。さらに1週後は角膜実質の収縮と実質細胞の出現が認められた。一方、各種抗体を用いた蛍光抗体法でホルミウムヤグレーザー照射により、I型コラーゲンに対する特異蛍光の局在は、照射前後で差を認めなかった。フィブロネクチンに対する特異蛍光は、照射した角膜では、無細胞領域の周辺に強い蛍光が観察された。基底膜成分であるIV型コラーゲン及びラミニンに対する特異蛍光は、正常角膜と同様に照射後も上皮の基底膜部に観察され、照射により局在の変化を認めなかった。 本研究の結果、ホルミウムヤグレーザー屈折矯正効果は角膜実質コラーゲンの収縮による事が確認された。一方、角膜上皮の構造を維持し創傷治癒に重要な役割をしている上皮基底膜成分の局在については、照射前後でほとんど変化がなく、このことはホルミウムヤグレーザー照射により上皮の傷害が少なく治癒も速やかであることを示唆している。
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