研究概要 |
我々はこれまでに突発性の瘢痕性角結膜上皮疾患2症例の涙液中にEBウイルス(EBV)が存在していることを証明した。本研究では,特発性瘢痕性角結膜上皮疾患の病態にEBVが関与しているか否かを再度検討した。 特発性瘢痕性角結膜上皮疾患13例26眼(上記の2例4眼を含む),Stevens-Johnson症候群,Sjogren症候群7例14眼,正常人9例18眼を対象として,涙液と結膜を採取した。これらの標本から抽出したDNAを鋳型として半定量PCR法を行い,涙液および結膜上皮内のEBVのDNA量を半定量化した。また,上記の2例4眼の結膜組織を生検で採取して,EBV EBER・プローブ(DAKO)を用いてin situ hybridizationを行い,EBVの存在の有無を組織中で検討した。 EBV感染細胞のNamalwa細胞を用いた検討で,我々のPCR法の感度はEBV 10コピーであった。涙液を用いた検討では,突発性瘢痕性角結膜上皮疾患13例8眼に陽性で,特に上記2例4眼の採取涙液中には,1.0×10^2〜1.0×10^5コピーという多量のEBVが検出された。Sjogren症候群2例2眼に弱陽性,Stevens-Johnson症候群と正常人はすべて陰性であった。結膜を用いた検討では,採取できた結膜上皮細胞数が少量で症例による差異が大きかったので,定量化は困難であった。上記の2例4眼においては,涙液のみならず,結膜上皮にも多量のEBVが検出された。他はすべて陰性であった。in situ hybridizationによる検討で,上記2例4眼のうち,1眼の結膜上皮の表層細胞に陽性所見が得られた。 以上の結果より,突発性瘢痕性角結膜上皮疾患の中に,EBVが発症に関与しているものが存在していることが示唆された。
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