研究概要 |
1)ラット眼底に強いレーザー光凝固を行い、実験的脈絡膜新生血管を発生させ、その増殖組織の発生、形成過程を組織学的に観察した。 2)ラットTransforming growth factor(TGF)β1、マウスTGFβ2、β3 cDNAをpBluescriptにsubcloningし、最も特異性の高いRNAプローブを作成し、増殖組織形成過程における、TGFβ1,2,3の発現をin situ hybridyzationの手法を用い、明らかにした。 3)光凝固後3日、光凝固部に多数の細胞が遊走した。凝固後1週、脈絡膜新生血管が発生し、網膜下に増殖していた。2週後には、脈絡膜新生血管は著明に発育し、網膜下腔に多くの血管腔が見られ、線維芽細胞の増殖も認められたが、4週後には、脈絡膜新生血管は存在するものの線維化が進み、退縮の傾向にあった。 4)正常網膜脈絡膜において、神経節細胞層にTGFβ1、TGFβ2mRNAの発現をみたが、TGFβ3の発現はみられなかった。 5)実験的脈絡膜新生血管発生の過程で、TGFβ1の発現は光凝固後2週、新生血管組織に弱くみられるのみであった。TGFβ2の発現は、光凝固後3日、凝固部およびその周囲の増殖した細胞に強くみられた。1週後その発現は、増殖した網膜色素上皮細胞、血管内皮細胞、macrophageにみられ、2週後には、新生血管内皮細胞に局在するようになっていた。4週後には、TGFβ2の発現は見られなくなっていた。TGFβ3の発現はいずれにもみなかった。 6)正常網膜にTGFβ1,2の発現があることがなり、このことから網膜のメタボリズムにTGFβが働いていると思われた。 7)光凝固後発生する脈絡膜新生血管の形成過程においてTGFβとくにTGFβ2が、大きな役割を果たしていることが明らかとなった。
|