インドシアニングリーン(ICG)蛍光造影は、臨床的にその価値が認められ世界的に普及した。しかしながら、その所見を読影するための基本である組織学的裏付けはなかった。我々は、世界に先駆けICGの網脈絡膜における局在を組織学的に証明する方法を確立し、網膜血管と網膜色素上皮にICGに対する血液網膜関門機能があることを証明し、さらにICGは脈絡膜毛細血管板から漏出する事実を証明した。今回の研究は病的状態の実験モデルを作成し、本方法を用いてその造影所見を組織学的に裏付けして、様々な眼底疾患のICG造影所見の正確な読影に寄与する目的で行った。 1)網膜光凝固:クリプトンレーザーを用いて、ラット眼底後極部に弱度光凝固を行い、網膜色素上皮、及び脈絡膜毛細血管板を障害すると造影早期の造影所見は脈絡膜毛細血管板の状態を反映することがわかり、また、網膜色素上皮障害部から網膜内にICGが漏出することがわかった。凝固後2週では、網膜色素上皮が重層化し、ICG蛍光のブロック効果を示すことがわかった。 2)脈絡膜新生血管:クリプトンレーザーを用いて、ラット眼底後極部に強度光凝固を行い、実験的脈絡膜新生血管を作成した。凝固後1週で管腔の大きな脈絡膜新生血管がみられ、ICG造影の早期にみられる網目状構造が脈絡膜新生血管を示していることがわかった。また造影後期には新生血管から網膜下に色素漏出していることがわかった。しかしながら凝固後2週になると網膜色素上皮が新生血管を囲い込み網膜下色素漏出がみられなくなることがわかった。 3)オルニチン網膜症:1-ornithine hydrochloride の0.5M溶液をラット硝子体内に注入して網膜色素上皮を選択的に障害すると脈絡膜から網膜下に著しい色素漏出がみられることがわかった。投与後1カ月になると続発的に脈絡膜毛細血管板が消失し、網脈絡膜萎縮に陥るが、この部位では、ICG色素が組織内にみられず、脈絡膜毛細血管板のみからICG色素が漏出することがさらに確認された。
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