高等脊椎動物の体幹を構成する骨は、体節から硬節が生じそれが軟骨、骨へと分化して内軟骨性骨化を起こすことが知られている。我々は鳥胚に直接実験操作を加えることで、体節から骨軟骨の分化決定の機構を理解しようとしている。本研究では、BMP(Bone Morphogenetic Protein)に注目し、まずその内因性の遺伝子発現パターンをwhole mount in situ hybridizationにより検討し、次にBMPタンパクを担体と共に胚に埋入しその影響を調べた。本年度の得られた結果としては(1)BMP4は胚発生の2日に神経管背側に発現が認められ、3日、4日と発生が進むに従い、その発現は神経管のみならず側方の皮筋節背側、それをおおう上皮にも発現が認められた。(2)BMP2の発現はこの時期の体幹中心軸組織には認められなかった。(3)2日胚の胸椎レベルに体節背側のBMP2あるいはBMP4タンパクを埋入させ、1週間後に骨格標本を作製すると脊椎骨、肋骨、肩甲骨に変異が認められた。(4)3日胚のもっと発生が進んだ体節にBMP2タンパクを埋入させると1週間後に認められる変異は肋骨の変化が中心で脊椎骨の変化は全く認められなかった。(5)BMPタンパクによっておこる脊椎骨の変化は椎体より後方の要素にのみ起こり椎体そのものの変異は認められなかった。以上の結果より、軟骨前駆細胞が出現する時期より以前に体節背側に埋入されたBMPは、中心軸骨格のパターン形成に影響を与えることがわかった。このことから体節形成期に胚の背側に発現するBMP4は、中心軸骨格の形成の制御に関与している可能性が示唆された。今後体節発生期にBMPタンパクにより制御を受ける分子を検索し、骨格形成に至る過程を分子レベルで理解したいと考えている。
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