研究概要 |
軟骨内骨化過程について明かにする目的で、ラット脛骨骨端軟骨のerosionzoneに存在する血管周囲細胞について微細形態学的、酵素、レクチン、免疫組織化学的に検討し、光学顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて観察した。 軟骨の石灰化層に侵入する血管に隣接して、粗面小胞体、ゴルジ装置が発達し、ミトコンドリア、ライソゾーム様構造物も多数含む血管周囲細胞が認められた。この細胞は、石灰化層横隔壁の未石灰化軟骨に対して指状の突起を形成し、ときに、変性した軟骨細胞を取り囲むように細胞質突起を発達させる像も観察された。血管周囲細胞は、酵素組織化学的には骨芽細胞のマーカーであるアルカリホスファターゼ活性および破骨細胞のマーカーである酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ活性陰性であった。レクチン組織化学的には、N-アセチルガラクトサミン結合特異性のドリコスマメレクチン(DBA)陽性であり、免疫組織化学的には、細胞周囲にはラミニン局在は認められず、マクロファージのマーカーの一つであるCD44にも陰性であった。 以上のように、erosion zoneには血管内皮細胞、骨芽細胞、破骨細胞、マクロファージとは異なる系列のDBA陽性の血管周囲細胞が存在し、未石灰化軟骨基質および変性した軟骨細胞を処理する細胞である可能性が指摘された。軟骨基質の中にはTGF-β、IGF-I,II,コンドロモジュリンなどの局所成長因子が貯蔵されており、軟骨内骨化過程においてこれらの局所因子が活性化され、骨芽細胞の分化を誘導し、軟骨基質から骨基質への置換過程に重要であることが指摘されている。erosion zoneに存在する血管周囲細胞は、軟骨内骨化過程において血管侵入および軟骨基質中の局所成長因子を活性化することにより骨形成への移行に重要な役割を担っていると考えられる。
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