研究概要 |
最近細胞壁ペプチドグリカンの要構造に相当し,種々の生物活性を保有する合成ムラミルジペプチド(MDP;N-acetylmuramyl-L-alanyl-D-isoglutamine)を予め投与したマウスにリポ多糖(LPS)やポタイコン酸(LTA)などを静注すると,マウスの血清中に腫瘍壊死因子(TNF-α)やインターロイキン(IL)-6が誘導される.さらに,MDP前投与マウス(特定の系統に限る)に適当な時間間隔(4時間前後)をおいて,ある種のLPSを静注すると,マウスはアナフィラキシ-様反応を起こして急死する.最近,常在菌叢をなす種々のグラム陽性菌による敗血症が注目を集めている.そこで,口腔に常在するレンサ球菌が上述の実験モデルで類似の作用を発揮するのではないかと考えて,標記研究を行った.即ち,本学予防歯科外来で小児のデンタルプラークより分離されたStreptococcus milleriグループのレンサ球菌50余株(S.anginosus18株,S.constellatus14株およびS.intermedius19株)の凍結乾燥標品(500μg)をMDP(100μg)を予め静注したC3H/HeNマウスに静注したところ,試供した殆どの菌株が,注射10-15分後にアナフィラキ-様反応を惹起して,半数以上の菌株が,少なくとも1匹のマウスの1時間以内に死亡させた[致死活性を示したのはS.anginosus9株(50%),S.constellatus7株(50%),S.intermedius13株(68%)].さらに生残したマウスの血清中のサイトカインレベルを測定したことろ,ほぼ全てのマウスで高レベルのTNF-αとLL-6が認められた.なお,アナフィラキ-誘導活性とサイトカインレベルはかならずしも相関せず,TNF-αとLL-6レベルの間にも必ずしも平行関係は認められなかった.今後,さらに菌株を増やして検討を進めるとともに,強い活性を示した菌株について,種々の菌体表層成分を調製して,それぞれの活性を担う構造を明らかにしたいと考えている.
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