研究概要 |
歯周病原菌であるP.gingivalis(P.g)は、食作用に抵抗性を示すが、歯肉線維芽細胞(Gin-1)や血清の存在が食細胞機能を助け、この食菌阻害を克服させると考えられる。P.gのもつ食菌阻止因子であるプロテアーゼと、Gin-1と血清の食菌促進因子との相互関係を明確にするため、P.gを種々の条件下で多形核白血球(PMN)と反応させ、食菌率を比較し、電顕観察を行なった。 1,食菌阻害に対するP.gプロテアーゼの影響をみるため、食菌反応系へそのインヒビターであるαPI,α_2M,PMSFを添加したところ、PMN細胞付着は改善されたが、細胞内取込を増加させることはできなかった。これは熱処理によってP.gを不活化した系においても同様であった。しかし血清と組み合わせることによって、α_2MとPMSFは、50%程度菌の取込を改善した。 2,食菌に促進的に働くと考えられる因子のうち(1)血清成分の影響をみるため抗体およびFibronectin(FN)の吸着血清、補体非働化血清を添加した系においてそれぞれ、25%、32%、45%の菌の取込減少がみられた。また(2)Gin-1の食菌促進因子について、P.gによる表層蛋白の変化をSDSPAGEとオートラジオグラフィーにより検討したところ、FNのバンドの消失がみられた。 さらに電顕観察で、Gin-1も血清も存在しない系のPMNはほとんど球形のままで、細胞、血清の存在により、PMNの儀足進展、付着、平坦化による歯のはきこみがおこることがわかった。 以上の結果よりP.gはトリプシン様酵素、コラゲナーゼによりそれぞれPMNの抗体、補体のレセプターを阻害し、付着、取込を妨げ、さらにGin-1のFNを分解していわゆるsurface phagocytosisも阻害することが示された。このため血清によるレセプター保護、抗体補体の供給、Gin-1によるPMNの足場提示は食菌阻害の克服に不可欠であることがわかった。さらにGin-1のPMN機能に対する影響を検討したい。
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