下顎頭の成長に伴う血管系の役割を明らかにする一環として、成長期(4週齢)ラットを用い、下顎頭軟骨内骨化における関節軟骨石灰化層に骨髄側から侵入する血管系に注目し、それらの血管構築および微細構造学的特徴について、以下の資料を制作して検索した。1.光顕用試料:墨汁注入組織切片。2.走査電顕用試料:合成樹脂血管鋳型標本および凍結割断標本。3.透過電顕用試料:超薄切片。 【結果】1.光顕所見:関節軟骨石灰化層の下端には、軟骨細胞の変性や死滅像がみられるとともに、軟骨小腔が基質の侵食により開放した部位に、骨髄側から上行する血管の侵入が認められた。また、血管の周囲には、多数の骨芽細胞やマクロファージ様の細胞も観察された。2.走査電顕所見:血管鋳型標本で同様部位を観察してみると、骨梁間を分岐しながら上行した血管が、石灰化層直下で毛細血管網を形成しているのが認められた。これらの血管は、鋳型の外形や表面印記の状態から静脈性のものが多く観察された。また、毛細血管網からさらに僅かに上行して球状盲端に終わる鋳型が多数みられたが、これらに相当するものを凍結割断標本で観察すると、石灰化層軟骨小腔に新生血管が侵入する明確な所見が得られたことから、血管鋳型像の球状盲端部は、新生血管先端部であることが証明された。3.透過電顕所見:石灰化層直下の血管の多くは、拡張した内腔を有し、内皮細胞の薄層部に50〜100nm径の小孔の存在する有窓性血管であった。 以上の結果から、下顎頭の軟骨内骨化において関節軟骨へ上行する血管は、静脈性のものが多く、それらは石灰化層直下において毛細血管網を形成し、そこから新生血管が派生して軟骨小腔内に侵入していた。これら石灰化層直下の血管は、多くは有窓性タイプであり、局所における活発な物質交換を示唆する形態であった。
|