研究概要 |
最初に、ヒト急性白血病由来全骨芽球細胞株(HL-60)を未分化骨髄細胞株のモデルとして用い、NaFがその細胞の増殖・分化にどのような影響を及ぼすかについて検討した。この細胞は自発的増殖活性を維持しているため、NaF処理時間を最大4日間に限定したうえで、活性型ビタミンD_3(Vit.D_3)の存在・非存在下で実験を行った。ここで、増殖・分化の指標として細胞数、細胞内エステラーゼ活性、NBT還元活性、表面抗原(CD11b,CD66b)の発現度、酸性ホスファターゼ活性、NO産生、サイトカイン(IL-1α,IL-6,TNF-α)産生、PGE_2産生に注目した。 その結果、NaF(0.5mM)単独処理でも弱いながらHL-60細胞を顆粒球方向へ分化促進させる作用が認められたが、Vit,D_3と併用することによって、この効果が顕著に増強されることを見い出した。また、その作用機序に関しては、内因性PGE_2の関与が強く示唆された。サイトカインやNOなどによる分化促進作用の可能性もたびたび報告されているが、我々の中和抗体を用いた実験からは有意な結果が得られなかった。以上の所見を総合すると、Vit,D_3とNaFの併用はHL-60細胞をPGE_2産生を介して顆粒球方向へ分化させることが示唆された。 現在、この結果を踏まえ実験材料をマウス初代培養骨髄細胞に移して検討中である。Preliminary studyの段階ではあるが、NaF単独処理で顆粒球特異的表面抗原の発現が有意に増加するということは特筆に値するものと思われる。
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