研究概要 |
破骨細胞は骨吸収において主役を担う細胞であり、通常数個から数十個の核を有する多核巨細胞である。破骨細胞は波状縁から酸(H^+)と各種加水分酵素を分泌し、骨の脱灰と有機基質の分解を行って骨吸収を進行させる。骨基質特にコラーゲンの分解には破骨細胞由来のリソゾーム性プロテアーゼ(カテプシン群)が重要な役割を果たすと考えられている。これまで筆者らはカテプシンB,D,Lが破骨細胞の波状縁部に存在し、骨吸収機構において機能分担を行っている可能性を示唆してきた。しかしカテプシンEの破骨細胞における局在や機能は全く明らかにされていない。そこで、破骨細胞に於けるカテプシンEの細胞内局在について検討した。 生後5週令雄性ラット大髄骨を4%パラホルムアルデヒド、0.1%グルタールアルデヒド含有0.1Mカコジル酸バッファー(pH7.4)で4時間4度で固定し、0.3%過酸化水素水で内因性ペルオキシダーゼを除去後、ラットカテプシンE特異的ポリクローナル抗体で反応させ、さらにABCベクタステインキットにて二次抗体およびアビシン-ビオチン複合体反応による免疫染色後、DAB反応を行った。光顕用にはパラフィン包埋し、電顕用にはオスミウム固定後、脱水しエポン812で包埋後、超薄切片を作製して電顕観察した。 光顕レベルでは、カテプシンEの免疫反応物は活性化破骨細胞に顕著に認められた。これに対し、近接している骨芽細胞にはカテプシンEの免疫反応物は殆ど認められなかった。電顕観察では、カテプシンEの免疫反応物はの波状縁部とそれに続く空胞様構造に偏在すること、骨面の反対側や骨面から解離した部分の細胞膜には存在しないことが示された。更にin vitroの実験からカテプシンEは酸性条件下でI型コラーゲンの対し分離能を有したことから、カテプシンEが細胞外での骨基質の分離と細胞内へ取りこまれた有機基質の分離に関与するものと推察される。
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