研究概要 |
本研究では,耳下腺の刺激反応性のアミラーゼ分泌に関わるタンパク質を検索し,その作用機構の解析を試みた.耳下腺のような外分泌については,その分子的なメカニズムがまだほとんど明らかにされていないが,神経細胞における神経伝達物質の分泌についてはそれに関わるタンパク質が多数報告されている.本研究では,それらのタンパク質(シナプトダグミン,シナプトフィジン,シンタキシン,SNAP-25, Rab3A, VAMP-2)にたいする抗体を用い,ラット耳下腺腺房細胞にたいするイムノブロット解析を行った.その結果,Rab3AおよびVAMP-2の抗体と反応するそれぞれ25kDa,18kDaのタンパク質がラット耳下腺腺房細胞の分泌顆粒膜に見いだされた.一方,神経細胞内でVAMP-2と相互作用していることがわかっているシンタキシンおよびSNAP-25は,耳下腺では検出されなかった.さらに,耳下腺以外の外分泌腺(顎下腺,膵臓,涙腺)において,同様の検討を行ったところ,Rab3AおよびVAMP-2は多くの外分泌腺で発現しており,外分泌において共通の機能を果たしていることが示唆された. 次に,VAMP-2が本当に耳下腺におけるアミラーゼ分泌に関わっているか調べるために,VAMP-2を特異的に切断するプロテアーゼであるボツリヌストキシンBを用いた実験を行った.ストレプトリシンOを用いて耳下腺腺房細胞を可透過にした状態で,アミラーゼ分泌を測定する系がすでに確立している.その透過性細胞を用いて,ボツリヌストキシンBを細胞内に導入し、アミラーゼ分泌にたいする効果を調べた.その結果,ボツリヌストキシンBは,非刺激時のアミラーゼ分泌には影響がなかったが,cAMP刺激時の分泌量を抑制した.したがって,VAMP-2はcAMP依存的なアミラーゼ開口放出に重要な役割を果たしていると考えられる.
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