5週齢Balb/C系雌のマウスを各群に分け、歯肉上皮下、背部皮下、足蹠皮下、ならびに腹腔内へ、1x10^<5-6>Plaque-forming Units(腹腔内接種時100%致死量)のHSV 1型深山GC^+株を接種し、感染部位の違いによる病原性について比較した。経日的に臓器を摘出し、ウイルスの全身への播種を調べた。ウイルスの検出には、ホモジナイズ法及びExplant法を行ない、Vero細胞を用いて通法に従った。 次に、ウイルスを上記各部位に接種後、経日的に感染部位の皮膚を摘出し、γδT細胞数を測定した。アセトン固定後、切片を作製し、FITCラベル抗TcRγδ抗体で37℃、30分染色した後、陽性細胞数を蛍光顕微鏡下で測定した。 結果と考察:腹腔内接種の死亡率は100%であったが、他の群では0%であった。ウイルス接種後3日目の腹腔内接種群では、ウイルスは、肝臓、脾臓、膵臓、脳から検出された。一方、歯肉接種群では、脳と三叉神経節からのみ検出された。背部皮下群ならびに足蹠皮下群では、上記の組織からウイルスは検出されなかった。すなわち、腹腔内接種群では全身の臓器へウイルスが播種したが、他の感染群では、感染部位やその支配知覚神経節に限局した。 歯肉上皮下、背部皮下、足蹠上皮感染群において、感染3日後における感染部位のγδT細胞数は有意に増加した。感染後7日目では、どの感染群においても非感染群との間に有意差は認められなかった。 以上から、γδT細胞はHSV-1感染急性期において上皮下局所でのウイルスの播種を統制している可能性が示唆された。今後、他の免疫担当細胞の質的、量的差異をも検討する必要が示唆された。
|