p16/CDKN2遺伝子は、cyclinD1/CDK4の複合体のインヒタビターとして発見され、さらにこの遺伝子が多くの悪性腫瘍で異常を起こしていることが明らかにされ、細胞周期の異常と悪性腫瘍の発生を結びつけた新しい癌抑制遺伝子として注目されている。 (材料・方法)口腔扁平上皮癌組織32例(癌部および周囲正常組織)、および口腔扁平上皮癌由来細胞株7種から抽出したDNAを対象とした。検索領域は、p16(CDKN2)遺伝子のエクソン1および、エクソン2に設定し、PCR-SSCP法にて変異の有無をスクリーニングした。PCR-SSCP法において異常の認められた試料については、ダイレクトシークエンスによって変異の位置と種類を同定した。 (結果)PCR-SSCP法で、口腔扁平上皮癌組織32例中2例(6.0%)に、また細胞株7例中3例(42.9%)に、異常バンドを認めた。シークエンス解析では、ミスセンス変異が2例、ナンセンス変異が3例であった。また、CDKインヒビターの変異は、原発巣に比較して株化された異数倍体細胞株に高頻度に見られた。 以上のことから、p16(CDKN2)遺伝子は、口腔扁平上皮癌の発生過程において、細胞周期のG1チェックポイントの制御異常を起こし、腫瘍の進展に関与している可能性が考えられた。 いままでサイクリンDの増幅、過剰発現が癌化、異数倍体化につながると考えられてきたが、サイクリンDは正常でもそれぞれを負に制御しているCDKインヒビターの変異が生理的なG1期からS期への進行を狂わせていることが十分示唆される結果となった。
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