歯科用金属の画像への影響は、特に磁性体を含む金属では大きく、非磁性体の金属ではその影響は小さい、と言われる程度で、金属がMR画像に与える影響についての詳細な検討は完遂されているとは言えない。今回の研究では歯科用金属がMR画像に与える影響を実験的に検討することを目的とした。 まず一辺が20cmの立方体で、x-・y-・z-軸方向に10mm間隔の格子の入ったベ-クライト製のファントムを作成した。次に一辺が10mmの立方体となるように、12種類の金属・合金を鋳造した。これをファントムの中央に装着し、水で満たして被験物体とした。 次に、8種類の撮像シークエンスでx-・y-・z-軸方向に被験物体を撮像した。また、同じシークエンスでエンコード方向を直角に変え、さらに適宜TR(繰り返し時間)TE(エコー時間)FA(フリップ角)などを変更し、x-・y-・z-軸方向に撮像した。 これらから、撮像頻度の高いスピンエコー系列のシークエンスにおいては、Co-Niなどの磁性体金属を含む合金では、信号欠損が大きく診断画像とはならないことが明らかになった。逆に磁性体を含まない金属・合金では金属の装着部位以外の信号欠損はなく、周囲に影響を及ぼすものはなかった。一方撮像時間を短縮することを目的として開発されたフィールドエコー系列のシークエンスにおいては、Co-Niなどの磁性体金属を含む合金ではもちろんのこと、非磁性体の金属においても周囲に画像の歪みを生じるものがあった。また、Co-Niなどの磁性体金属を含む合金では60mm以上にまで画像の歪みが生じた。 撮像前に患者に装着された金属の種類を同定することは困難であるため、まずスピンエコー系列のシークエンスによって撮像を行い、画像の歪みの形・範囲から金属を類推し、次のシークエンスに進むかどうかを決定することが肝要であると結論付けられた。
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