本学施設において、超音波診断画像における悪性腫瘍のリンパ節転位とリンパ節炎との画像的な差異をパーソナルコンピュータを用いて解析を行った。 解析対象は東京歯科大学千葉病院歯科放射線科外来にて超音波診断を行った10名で、リンパ節炎5例、悪性腫瘍のリンパ節転移5例とした。 撮影中の超音波画像を超音波装置から接続されたVTRに記録し、記録した超音波画像をコンピュータに取り込んだ。画像解析のためのソフトを自作し、取り込んだ画像で最も描出されたと思われる部位に関心領域ROIを設定した後、輝度分布、ヒストグラム、パワースペクトル、規格化積分パワースペクトル、最大グレイ値、最小グレイ値、標準偏差をリンパ節転移とリンパ節炎それぞれについて算出した。このように算出したデータについてリンパ節転移とリンパ節炎とを比較検討した。それぞれの内部エコーならびに後方エコーに関するデータをレファレンスデータを考慮しながら比較したところ、現在までに炎症と転移の鑑別を行えるほどの特徴的数値所見は得られていない。この原因として、今回分析対象とした症例が典型的なものが少なく、しかも5症例ずつと症例数が少なかったことが考えられる。今後、症例数を増やし、統計処理を行えば、特徴的な数値所見が得られるものと思われる。また、この結果は、コンピュータ画像解析を利用してもリンパ節の炎症と転移の鑑別は内部エコーや後方エコーなどの単独の所見では困難であり、肉眼での診査と同様、その他の超音波所見と合わせて総合的に判断される必要があることを示すものとも考えられる。 今後症例数を増やすとともに、病巣の大きさ、縦横比などの幾何学的特徴量を求めるプログラム、さらに辺縁境界エコーなどを定量的に表現するための解析プログラムを開発し、種々の疾患に対して様々な方向からの分析を行うことで、総合的な診断支援情報を与えてくれるシステムを構築していく予定である。
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