申請者は、顎骨内病変における内部性状の推定が超音波断層装置で可能であると考え、それを検証するためにその基礎的実験を行ってきた。その結果、定性的および定量的に超音波でも十分に診断できうることを証明した。定性的な診断においては、現在、臨床応用を行っている。しかし定量的な診断において、基礎的実験では、その精度が不安定であった。本年度は、定量的診断の精度を向上させるため、その実験を行った。 すなわち、2つのA-mode超音波プローブを、一方を送信、他方を受信として対向するように配置し、その間に、ファントームを置いた。このファントームは、顎骨内に発生した病変を想定して、半切乾燥下顎骨の海綿骨を除去し、その部分に物質を充填したものである。ファントーム内部に充填した物質は、顎骨内の内部性状の異なる種々の病変を想定し、水、肉、ヒマシ油とした。これらを周囲を吸音材で破った水槽中に沈めた。ファントーム、2基の超音波プローブを固定する固定装置は、ブレ等を防止するため新たに強固なアルミ製のものを作製した。測定は透過法で行い、得られた透過波形をシンクロスコープ内のメモリーをかえして、パーソナルコンピュータ(PC-9821Ae/U2)に送った。その後、自作のBASICプログラムによりFFT処理を行った。計測は精度を高めるため、25ポイントについて測定を行い、それぞれのポイントにおけるFET波形を平均し、封入した物質の代表的なFFT波形とした。 その結果、水、肉、ヒマシ油の順で減衰値が増加し、非常に明瞭な差が得られた。さらに、周波数成分についても、水、肉、ヒマシ油の順で、低周波成分が上昇しかつ高周波成分が減少し、それぞれの成分で明確な値が得られた。 今後は、データ取得およびその処理を早め、臨床に適用するため実験を重ねていく。
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