研究概要 |
1.種々の癌細胞株からのトリプシン活性の検出 入手可能な癌細胞株(現在報告されている胃癌を除く)8種類(神経鞘腫、グリオブラストーマ、メラノーマ、偏平上皮癌等)に関して、ザイモグラフィーとRT-PCRによる分析の結果、膀胱癌(T24)より、活性とそのmRNAの発現が検出された。また、顎下腺癌細胞株RSS18からもトリプシノーゲンmRNAの発現が検出された。このことは、25-kDaゼラチン分解活性ががトリプシンによることを示唆している。 2.トリプシンの合成調節機構 STKM-1クローン(S4, R3)は、R3細胞に比べてS4細胞の方が悪性度、トリプシン合成能ともに高かった。本実験では、これらS4、R3細胞をコンフルエントで6日間培養したのち超音波処理により細胞剥離することによって得られたフラスコ(S4F, R3F)と、再構成基底膜であるマトリゲルでコートしたフラスコ(MF)を用意して、トリプシン合成能の低いR3細胞を播種して24時間後のトリプシノーゲンmRNA発現をRT-PCR法により調べたところ、S4F>R3F>MFの順であった。このことは、悪性度の高い細胞ほどトリプシン合成を誘導する接着性の蛋白質を分泌している可能性を示唆するものである。 3.ラット顎下腺癌細胞株(RSS18)のアンドロゲン依存性 RSS18細胞のアンドロゲン依存性を調べるためにテストステロン代謝とジヒドロテストステロンの増殖に対する影響とアンドロゲンレセプターの発現について検討した。その結果、テストステロンからの主要な代謝産物は、活性型のアンドロゲンといわれるジヒドロテストステロンであり、ジヒドロテストステロンは、RSS18細胞の増殖を促進した。また、RT-PCRによる分析からアンドロゲンレセプターmRNAの発現が検出された。これらの結果は、RSS18細胞が、前立腺癌よりもBPHのアンドロゲン依存性に類似していることを示している。
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