研究概要 |
これまでの研究で明らかになったことは以下の3点である.まず第一に,歯髄細胞(主に象牙芽細胞)を生活性を失わずに単離することに成功した.これにより抗体産製のための抗原を高密度で確保することができ,かつ電気生理学的なアプローチが可能になった. 第二に,In vitro immunization法を用いて、象牙芽細胞と樹状歯髄細胞を同定できるモノクローナル抗体産生に成功した.幾千もの産製抗体から4種類を選択した.すなわち(1)象牙芽細胞の細胞質とミエリン鞘を染めるIgG抗体,(2)象牙芽細胞のplasmamembraneを特異的に染めるIgG抗体,(3)象牙芽細胞の核と細胞質および象牙芽細胞層下層の細胞の核を染めるIgG抗体,(4)象牙芽細胞,dendritic cell,血管内側のendothelial cellを染めるIgM抗体である.これらを独自にあるいは組み合わせて使用することにより、cryostat標本上でも単離細胞においても象牙芽細胞とその下層の樹枝状細胞の同定が可能になった. 第三に,電気生理学的にpatch-clamp法を応用して電極先端と象牙芽細胞膜間にギガオームレベルの高抵抗シールに成功し,single channel記録に成功した. 歯科領域でのin vitro immunization法と象牙芽細胞へのpatch-clamp法応用は世界初の試みであり、この研究は歯髄細胞機能を解明する出発点となりうると考えられる。
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