研究概要 |
ファイブロネクチン(Fn)は細胞外マトリックスを構成する代表的な糖タンパク質であり、細胞接着、遊走、分化などに重要な働きをする。各組織特有のオールタナティブスプライシングを受ける主な三つのドメイン(EIIIB,EIIIA,IIICS)の内、前者二つのドメインは、初期発生及び創傷治癒過程においてスプライシングを受けずに多く発現する事が知られているが、その生物学的活性は未だわかっていないので、検索した。 (1)リコンビナントヒトFnフラグメントの分離精製:FnタイプIIIドメインから構成されるフラグメントでEIIIB,EIIIAを含むか含まないかにより8種類のものをpET expression systemを用い、原核細胞に発現させ、分離精製した。さらにMonoQクロマトグラフィーを用いて精製度をあげた。これらフラグメントの精製純度はSDS/PAGE法にて約90%程度であった。 (2)吸着試験:上記タンパクがポリ塩化ビニルアッセイ・プレートに吸着されることをELISA法を用いて確認したところ、いずれのフラグメントも約10nMで安定して吸着された。 (3)細胞接着試験:二種類の細胞接着試験を試みた結果、ハムスター継代培養線維芽細胞(NIL)とヒト歯肉線維芽細胞(HGF)はいずれのフラグメントに対しても接着した。EIIIBドメインを含むフラグメントは含まないものと比較し、低濃度において細胞接着が認められた。EIIIBドメインへの直接的な細胞接着は認められなかったものの、他のフラグメントとの競合試験を行なった結果、EIIIBドメインには細胞接着を促進する可能性があることが示された。EIIIAを含むフラグメントと含まないものとで、細胞接着に特に有為差はみられなかった。
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