研究概要 |
本研究では,象牙質感覚と歯髄血流の相互関係に着目し,歯髄血流 の変化がシュウ酸カリウム塗布に対して及ぼす影響を,走査電子顕微鏡を用いて観察した. 1.ヒトの歯を用いた実験 矯正治療のため抜歯予定のヒト小臼歯5本の頬舌側歯頸部に窩洞を形成し,エッチングした象牙質面を実験に用いた.キシロカイン(血管収縮剤含有)の投与により歯髄血流は約半分に減少した.実験群(187.4±42.5μm)とコントロール群(キシロカイン単味,221.4±38.7μm)の間で,シュウ酸カリウム塗付により生成された結晶の象牙質表面からの距離に有意差(p>0.05)はなかった.また,結晶の生成状態にも明らかな差はなかった. 2.動物を用いた実験 (1)イヌの歯31本を用い,エッチングした健全露出象牙質にシュウ酸カリウム塗付を行った.エッチング後にシュウ酸カリウムを塗付した時,最深部の結晶までの距離は175.8±24.7μm(n=9)だった.塗付後に口腔内に1週間放置すると,147.5±50.0μm(n=15)に減少したが有意差(P>0.05)はなかった. (2)イヌの歯を入手することが困難になったので,ネコの歯を用いて歯髄血流を変化させる実験を行った.ヒトの歯を用いた実験と同様の条件で実験を行ったが,現在,まだ十分な標本数が得られておらず,標本数を増やすために実験を継続中である。
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