研究概要 |
我々は慢性辺縁性歯周炎炎症局所で見られるリンパ球浸潤を中心とした炎症病態解明に向けて、リンパ球とヒト歯肉線維芽細胞(HGF)との細胞間接着の解析を行い、ヒアルロン酸レセプターとして知られるCD44分子がこの細胞接着に関与していることを明らかにしている。一方、CD44分子は種々のアイソフォームを有し、糖鎖による修飾やmessengerRNA(mRNA)レベルでの修飾でその機能を変化させることが知られている。そこで今回歯周組織でのCD44分子及びそのアイソフォームの発現を蛋白及びmRNAレベルで検討した。 歯肉組織片を抗-CD44抗体で染色したところ角化上皮を除く全ての構成細胞にその発現が検出された。詳細な解析のために歯肉線維芽胞(HGF)、歯根膜細胞(HPDL)、歯肉上皮細胞(HGEC)をin vitroに単離し、FACS,免疫沈降反応によりCD44蛋白を検出したところ、各細胞は同様に表面にCD44分子を発現していたがHGECは他の細胞が有する約90kDaの分子に加え、約130-150kDaのCD44分子を発現していた。ノーザンブロッティングによる解析ではHGECは高分子に偏位したCD44特異バンドを発現していた。更にCD44分子多様性を詳細に調べるためにCD44分子の細胞外ドメインに存在する可変エクソン挿入部位を囲むPCRプライマーを設定し、RT-PCR法によるアイソフォームの検出を行った。エチジウムブロマイドDNA染色では、HGF,HPDLは可変エクソンを含まないCD44mRNAを発現していたがHGECは800bp付近を中心に複数の産物を有していた。RT-PCR産物をサザンブロッティング法により検出した結果、HGECは10種類以上のアイソフォームを有することが明らかとなった。今後、CD44アイソフォームと歯周組織に於けるその機能の関係を解析する予定である。
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