申請者は、in vitroにおいて既にリンパ球と歯肉線維芽細胞との相互作用において細胞接着分子が重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、in vivoにおけるこれら細胞接着分子の発現状況を検討した。具体的には、歯周外科手術時に採取した炎症歯肉組織から凍結切片を作製し当研究室にて樹立された抗-CD44抗体OS/37および抗-β1インテグリン抗体4-145にて免疫組織染色することにより、組織切片上でのこれら接着分子を検出しその局在を検討した。その結果、CD44分子は上皮角化層を覗き上皮層、結合組織中の線維芽細胞、血管内皮細胞、浸潤細胞が染色されており、β1インテグリンに関しては上皮においては基底細胞以外は染色されなかったものの上皮下ではCD44と同様の結果であった。このように歯肉組織にはCD44、インテグリンが広範囲に発現されており歯周病の病態形成にこれら接着分子が深く関わっていることが示唆された。 また、In situハイブリダイゼーション法を用いて歯肉組織でのサイトカインmRNAを検出する系を確立するために、IL-1αに対するアンチセンスおよびセンスRNAプローブを作製しDigoxigenin(DIG)にて標識した。このプローブを用いて培養歯肉線維芽細胞上でIL-1αmRNAの検出を試みたが、アンチセンスとセンス・プローブで傾向が異なるもののはっきりとしたシグナルは現在のところ検出されていない。また、歯肉切片上でもハイブリダイゼーションを行っているが、歯肉線維芽細胞内にIL-1αmRNAと思われるシグナルが認められるものの非特異的呈色が認められ実験系が確立していない状態である。今後、さらに実験方法の条件を検討し実験系の確立を目指すと共に、各種サイトカインmRNAに対するプローブを作製して培養細胞に関しては細胞を刺激することによる各種サイトカインmRNA発現パターンの検討を行う予定である。
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