研究概要 |
コンポジットレジン修復歯の予後において、歯髄反応を呈さないまま歯髄が失活し根尖病巣を形成していることがある。臨床的にはネクローシスと診断されているが詳細な報告はほとんどなく病因は明らかにされていない。最近私達はコンポジットレジンが歯髄刺激性を有し、細胞形態には大きな影響を与えないもののその機能に偽害性のあることを明らかにした(1993,日歯保誌,春季特別号)。一方、ネクローシスとは異なる細胞死の一機構としてアポトーシスが近年明らかにされつつあり、様々な原癌遺伝子(c-myc,Bcl-2,c-jun,junB,c-fos)が重要な役割を演じていることも報告されている。今回の研究目的は核原癌遺伝子(junB,c-jun,c-fos)の発現をアポトーシスおよび細胞増殖・分化の指標として用い、コンポジットレジン修復後にみられる歯髄死へのアポトーシス関与の有無を検討することにあった。まず、正常な歯の発生における各遺伝子の発現を定量的に検討するため、比較的細胞調製の容易なウシ歯胚を用いた。歯胚を4種の細胞群に分けRNAを精製しNorthern Blotting法により各遺伝子の発現を比較したところ、細胞分化の程度によって遺伝子発現に差異があることを明らかにした(1995,日歯保誌,春季特別号)。今後はIn situ hybridization法によりウシ歯胚における各遺伝子を発現している細胞を同定し、更にラット正常歯胚,成熟歯を用いた各遺伝子の発現に関する検討を行った後、窩洞形成後および各種修復材充填後の成熟歯髄における各遺伝子の発現状態を比較することで、コンポジットレジン修復後にみられる歯髄死へのアポトーシス関与の有無を検討していく予定である。
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