本研究ではマウスストローマ細胞と骨髄細胞の共培養実験系を使用して、破骨細胞から産生されるサイトカインの同定と、それらのサイトカインの破骨細胞への分化・増殖及び骨吸収に於ける役割について検索した。実験では、MC3T3-G2/PA6細胞上に1×10^4cell/dishのマウス骨髄細胞を播種し、7日間培養する事により破骨細胞を誘導した。培養後の細胞はラビット抗マウスIL-1α、β、TNFα、β抗体を使用して免疫染色、及びIL-1α、βをコードするcDNAをプローブとしてin situ hybridizationを行った。その結果、免疫染色ではIL-1αとTNFαの染色所見のみ陽性を呈し、in situ hybridizationに於いてはIL-1αのみ遺伝子を発現している事が確認された。次に共培養実験系に抗IL-1α或は抗TNFα抗体を添加して共培養を行い、TRAP陽性細胞の単核・複数核細胞比を測定したところ、コントロール群に比較して抗IL-1α抗体添加群、抗TNFα抗体添加群、両抗体添加群の全てに於いて単核細胞の比率が高く、細胞融合が阻害されている事が示された。又、象牙切片上で培養したTRAP陽性細胞に同様の抗体を添加した場合では、TRAP陽性細胞による吸収窩面積は、コントロール群と比較して抗TNFα抗体添加群で84%、抗IL-1α抗体添加群及び両抗体添加群で約90%の減少を示した。更に、サイトカインの遺伝子発現をブロックする為にIL-1α及びTNFαのmRNAに対するsenseとantisenseを合成し、10μMずつ添加後培養し染色を行ったところ、単核・複数核細胞の比率はIL-1α・TNFα両方に於いてantisense群はsense群よりも複数核細胞が減少し、同様に象牙切片上の吸収窩面積にも約90%の骨吸収抑制が認められた。
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