研究概要 |
現在市販されている、2つの異なった周波数に対するインピーダンス応答の相対的変化を応用した根管測定器の特性については、主に抜去歯モデルを用いた実験系により検討されつつある。しかしながら、いまだそれらが充分とは考えられず、また、抜去歯モデルの外液が正しく歯周組織の電気的状態を再現しているかという点で疑問が残る。そこで本研究ではウシの下顎骨を用いて、生体のもつ歯周組織の電気的状態に比較的近い実験モデルを作製し、根管長の測定を左右同名歯において同時に行って左右それぞれの実験条件の変化((1)根管電極の変位に対する指示値の変化、(2)根尖孔の径の影響、(3)根管電極の太さの影響、(4)次亜鉛素酸ナトリウム溶液の濃度)が根管長測定器の指示値に及ぼす影響について検討した。 その結果、(1)実験に使用した3機種(APIT, ROOT ZX, JUSTY)の根管長測定器ともに、メーターは根管電極が根尖孔付近に到達して初めて急激に変化した。(2)上記の3機種ともに、根尖孔の径が40号程度までの場合には、メーター指示値に及ぼす影響はほとんど認められなかった。しかしながら、根尖孔の径が太くなるにつれメーター指示値では根尖孔部に根管電極が到達していなことがあり、その傾向はAPITにおいてやや多く認められた。(3)上記の3機種ともに、根管電極の太さによるメーター指示値への影響はほとんど認められなかった。(4)次亜鉛素酸ナトリウム溶液の濃度差(10%、5%、2.5%および1%)がメーター指示値に及ぼす影響はほとんど認められなかった。しかしながら、根尖孔の径が太い場合は、根管内に次亜鉛素酸ナトリウム溶液が存在するとメーター指示値では根尖孔部に根管電極が到達していない傾向がより顕著になった。 上記のように、今回の実験では、従来の抜去歯モデルを用いた実験系によって報告されている場合とほぼ同様の結果が得られた。電気的根管長測定器の評価は、測定器が根尖狭窄部を指示する位置でファイルを固定し、歯を抜去した後になされることが適切であると考えられるため、今回実験に用いたウシ下顎骨による実験モデルは非常に有用なものであると思われた。
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