研究概要 |
歯肉溝滲出液(GCF)に含まれるプロテオグリカン(PG)の炎症に伴う分子量の変化、由来組織は不明である。本研究はイヌ実験的歯周炎の進行に伴うGCF,歯肉,歯槽骨のコンドロイチン4硫酸プロテオグリカン(C4S-PG),コンドロイチン6硫酸プロテオグリカン(C6S-PG),デルマタン硫酸プロテオグリカン(DS-PG)の分子量の変化と、それらを各サンプル間で並列比較検討してGCFの由来組織を考察するために行った。雑種成犬12頭の臼歯部歯肉に絹糸を2重に結紮して実験的歯周炎を惹起し、0日(健常,非結紮)、結紮3,7日(急性炎症期)、21日(慢性炎症期)の各ステージで、血清、GCF、歯肉、骨を採取し、サンプルを抽出し、作製し、その後各サンプルはウエスタンブロティングを行い、モノクローナル抗体(2-B-6,3-B-3)を用い免疫染色を行った。 GCFは、C4S-PG, C6S-PG, DS-PG共に、健常時には12-18, 28-49KDaの間に血清には認められないバンドが存在し、その分子量は(C4S-PG:16,18,40,47KDa, C6S-PG:16,18,41,49KDa、DS-PG:15,18,37,46KDa)であった。また、結紮日数の増加に伴い健常時には認めなかったバンドを検出し、その構成は各ステージ間で変化が見られた。すなわち、12-18KDaのバンドはC4S-PGでは3日に、C6S-PG, DS-PGでは7日に最も数多いバンドを検出した(C4S-PG, C6S-PG:15,16,17,18KDa, DS-PG:12,13,15,17,18KDa)。一方、28-49KDaのバンド数は3,7日に増加し、C4S-PGでは31KDa(3,7日)37KDa(3日)45KDa(7日)に、C6S-PGでは34KDa(3,7日)46KDa(3日)に、DS-PGでは42KDa(3日)35KDa(3日)35KDa(7日)に他のステージに認められないバンドを検出しした。GCFと歯肉に分子量の比較では、12-18, 28-49KDa間には炎症に伴い同じ分子量を多数検出した(C4S-PG:15,16,17,31,33,35KDa, C6S-PG:14,16,17,18KDa, DS-PG:15,17,18,33,35,40KDa)。さらにGCFと歯槽骨間では、C4S-PG, C6S-PGの16KDaとC4S-PGの7日に検出した45KDaは骨にも認められた。以上の結果よりGCFのC4S-PG, C6S-PG, DS-PGは炎症の進行に伴い分子量レベルで変化し、歯肉、歯槽骨由来の組織代謝産物、破壊産物が含まれている可能性が示唆された。
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