研究概要 |
本研究では、ラットの根尖部歯根膜血管の微細構造を明らかにする目的で、下顎第一臼歯の根尖部歯根膜の組織構造と微細血管構築の観察を行った。 実験には、生後3ヶ月齢のWistar系雄性ラットを用いた。すべての動物は、実験開始日に、下顎左側第一臼歯の歯髄を露髄し、処理群とした。また、右側下顎第一臼歯は未処理群とした。すべての動物は、露髄後、14日後に麻酔下で開胸し、脈管注入法にてアクリル樹脂を注入し、硬化後下顎骨のみを摘出した。摘出した下顎骨から歯根膜血管のみを剖出し,SEMにて観察した。組織標本は、通法に従って近遠心的連続切片を作製し、HE染色を施し光学顕微鏡にて観察を行った。 未処置群の光顕所見では、歯槽骨よりに管腔が広い細動静脈が存在し、セメント質に向けて斜め上方に毛細血管ループを形成しているのが観察された。また、骨髄血管との交通枝は、根尖部で最も多く、根中央部から歯槽骨頂部に行くに従って減少していた。また、セメント質は根尖部から歯頸部にかけて薄く一層存在しているのが観察された。処置群の光顕所見でも、細動静脈は歯槽骨より存在し、セメント質に向けて斜め上方に毛細血管ループを形成していた。また、骨髄血管との交通枝は根尖部で最も多く観察され、その数は未処置群よりも多いように思われた。さらに、セメント質は根尖部において肥厚している状態が観察された。未処置群のSEM所見では、歯根膜に分布する血管は、歯根を取り囲むようにバスケット状に密に分布していた。また、歯槽骨よりに形成された比較的太い細動静脈の粗な血管網から根側に向けて数多くのループを派出している像が観察された。処置群のSEM所見でも、未処置群と同様な所見が観察された。しかし、歯槽骨側に比較的太い細動静脈の粗な血管網から派出しているループの数がより多いように思われた。今後、処置数を増やし、露髄後からの期間の影響も検索していく予定である。
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