| 研究概要 |
本研究では上顎臼歯部における歯周組織の歪みを,咬合接触ならびに隣接接触関係を持たない上顎第1大臼歯の変位を指標として三次元的に解析することができた。測定は前頭面内および水平面内のそれぞれの変位経路について行い,前頭面内での測定には2次元微小変位計K型をまた水平面内での測定には2次元微小変位計M型を用いた。被験歯に対する機能力負荷条件は咬頭嵌合位での噛みしめ,隣在歯における咬合紙4枚あるいは8枚の噛みしめでなおかつ被験歯に咬合接触が生じないことである。このような条件下で得られた上顎第1大臼歯の変位経路は歯周組織の歪みによるものと考えられ以下の結論を得た。
1.機能時の咬合力による歯周組織の歪みの結果として生ずる上顎第1大臼歯の変位を,水平面内および前頭面内で測定して3次元的に考察することができた。
2.歯周組織の歪みによる上顎臼歯の変位方向は,咬合力が作用した部位の影響を近遠心的には受けるが,前頭面内ではその影響はあまりみられずほぼ一定の傾向を示した。
3.歯周組織の歪みによる上顎臼歯の変位経路は咬合機能力による歯牙の生理的な変位経路に類似していた。
4.歯周組織の歪みによる上顎臼歯の変位は隣接接触関係の影響を受けた。
5.上顎臼歯部基底部は,咬合力によって一塊としての固有の動きをする可能性が示唆された。
6.歯冠補綴に際しては,歯周組織の歪みによる変位経路を乱さないような咬合接触関係ならびに隣接接触関係を構成する必要がある。
この研究は第91回日本補綴歯科学会学術大会ならびに日本補綴歯科学会雑誌第40巻1号において発表した。
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