近年、種々の義歯裏装材が開発され、補綴臨床に広く応用されている。ティッシュコンディショナ-により、組織調整、動的印象を行ったのち、弾性裏装材によりリライニングを行う術式は無歯顎難症例の義歯作製には、臨床的に非常に効果的である。しかしながら、動的印象を行ったのち、間接法により弾性裏装材をリライニングするため、術式が繁雑で、寸法安定性等の問題があり、これまで本術式の大きな問題点とされてきた。また高齢化社会を向かえ、高齢無菌顎患者も今まで以上に増加するものと考えられる。そこで本研究では義歯裏装材の組成、成分と理工学的性質との関係について検討し、動的印象を併用できる弾性義歯裏装材を開発することを目的とした。まず、義歯裏装について体系的にまとめ、さらに現在市販されているシリコーン系、フッ素系、アクリル系、ポリオレフィン系の弾性裏装材の粘弾性的性質および基礎的な物性について測定した。さらに動的印象材は経時的に物性が変化するため、漬浸溶液が本材の粘弾性の経時的変化に及ぼす影響についても検討した。また義歯裏装材に含有されている架橋材が機械的性質、吸水量、溶解量に及ぼす影響を検討し、各架橋材に適切と考えられる含有量について考察した、本年度は以上のことについて実験を行った。現在、義歯裏装材の硬化機序についてレオメーターを用いて、計測中であり、適切と考えられる硬化特性について検討中である。さらに粘弾性の異なる義歯裏装材を用い、義歯裏装材の粘弾性的性質と咀嚼効果、および咬合力との関係を測定している。さらに理工学的性質と機能的効果との関係を調べ、動的印象を併用できる弾性義歯裏装材について検討を重ねていく予定である。
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