当研究室で独自に開発した九大式非接触三次元精密変位計測システムを用いて、いわゆる健常有歯顎者10名(両側20顆頭)の側方運動を左右各側4回づつ計測し、データレコーダに記録した。この計測データを、AD変換により、パーソナル・コンピュータ上に記録させ、自製プログラムにて以下の5項目;(1)5つの水平面での不動点の検索、(2)各不動点の直接性、(3)側方咬合軸の傾斜度の算出、(4)切歯路傾斜度と側方咬合軸の傾斜度の相関、(5)顆路傾斜度の側方咬合軸の傾斜度の相関について解析を行った。 その結果、側方運動時、各水平面において不動点は存在しなかったが、この点に準じた可動範囲最小点を1点づつ検出することができた。また、これらの5点を上下に結ぶと、直線を成し、側方咬合軸を構成することができた。これらより、生体において、側方運動時には側方咬合軸が構成されることが検証された。 さらにこれらの側方咬合軸の傾斜度、各被験者の切歯路傾斜度および顆路傾斜度を算出したところ、側方咬合軸の傾斜度と切歯路傾斜度の回帰直線を求め、両者には有意な正の相関がみられた(p<0.05)。また同様に、側方咬合軸の傾斜度と顆路傾斜度の回帰直線を求め、両者には有意な正の相関がみられた。(p<0.05)。 以上より、生体においてGysiの軸学説を、切歯路傾斜および顆路傾斜の側方咬合軸への影響を含めて、検証することができた。
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