歯科用金属感作マウスの作製において、本年度は一般の健常者で感作している割合が高く、パッチテストで疑陽性反応を起こしやすいため判定がしにくい水銀について研究を行った。 感作の誘導に用いる金属抗原の作製において、当初、誘導期間中にできるかぎり長く接触部に金属塩が留まることを目的として基剤に白色ワセリンを用いていたが、粉末状の金属塩を均一に混和するのが困難なこと、金属イオンの方が経皮的に吸収されやすいことを考慮して、基剤はアセトン、オリーブ油混合液にした。水銀感作マウスの感作の判定で、塩化第2水銀をエタノールに溶かして、耳部に塗布し、その厚さを経時的に測定していたが、再現性のある実験結果が得にくかった。これは、エタノールが水銀の毒性に対して拮抗作用を有しているためであると考えられたので、基剤として感作誘導に用いたものと同じ、アセトン、オリーブ油混合液にした。現在判定に用いる塩化第2水銀の濃度を検討中であるが、改善傾向を認めている。 また、感作判定の別の方法として、リンパ球増殖試験の応用を試みたところ、水銀イオンを刺激抗原とした場合、低濃度(0.5〜1.0μM)での増殖傾向と、高濃度(5.0〜100μM)での抑制傾向がみられた。しかし、今回設定した水銀イオン濃度では、感作リンパ球と非感作リンパ球の増殖活性に有意な差は認められなかった。水銀結合表皮蛋白抗原に対する感作リンパ球の増殖応答は、コントロール(RPMI1640培地)および、非感作リンパ球の増殖応答に比較しても有意に大きかったが、感作リンパ球および非感作リンパ球ともに抗原濃度間にリンパ球増殖応答の有意差は認められなかった。
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