研究概要 |
目的および方法 : 多くの患者の咀嚼機能を手軽に評価できる方法を確立することを目的として,基礎的・臨床的検討を行った.すなわち,試験食品のピ-ナッツ3gを圧縮粉砕用治具(間隙:1.0mmから4.0mm)と油圧プレスを用いて機械的に粉砕する試行を3回繰り返した後,粉砕されたピ-ナッツ全量を5,10,20,40meshの篩いを用いて篩い分けし,各篩い上のピ-ナッツ容積を測定した.また,30名の若年有歯顎者および20名の全部床義歯用着者を被験者として,ピ-ナッツ3gを習慣性咀嚼側にて20回咀嚼させ,粉砕されたピ-ナッツ全量を回収する操作を3回繰り返し,3回分の粉砕されたピ-ナッツ全量を試料として,先の実験同様に篩い分け後に各篩い上のピ-ナッツ容積を測定した.機械的にピ-ナッツを粉砕した際の5,10,20,40mesh上残留量の総和は20.4mlであり,全部床義歯装着者のそれは,20.1mlであった.この結果をもとに,従来より咀嚼機能の評価の指標として用いられるKapurらの方法の咀嚼能力の算出式における5,10,20,40mesh上全ピ-ナッツ量を定数(20ml)に置き換えた簡便化咀嚼機能算出式を設定した.さらに,全部床義歯装着者および若年有歯顎者の咀嚼能力を,Kapurらの算出式および今回設定した簡便化咀嚼機能算出式を用いて算出し,両法の相関を検討した.その結果,全部床義歯装着者における両者間の相関係数は0.808,若年有歯顎者におけるそれは,0.984であり,ともに統計学的に有意であった.したがって,今回考案した咀嚼機能評価法は,5mesh上の残留両のみを測定することにより咀嚼機能を評価できることが示唆された.
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