研究概要 |
リン酸4カルシウム粉末に添加するキトサンの添加量について再検討を行った.添加量は,前回の課題研究において5wt%が限度であることが判明したため,本研究ではさらに細かく設定することとした.具体的には,添加量を1、2、3、4、5wt%とした.練和液成分に関しては従来から使用しているリンゴ酸-クエン酸水溶液を用いた.物性に関してはADA規格No. 61に準じて硬化時間,圧縮強さならびに崩壊率の測定を行い,さらに,ヒト象牙質に対する接着強さの測定を行った.その結果,キトサンの添加量が増加するに従い,硬化時間は長くなり,圧縮強さでは2wt%を越えると極端に小さくなった.また,崩壊率に関しては大きくなった.市販裏層材との比較においては硬化時間ならびに圧縮強さに関してキトサンの添加量が2wt%以内であれば遜色のない結果が得られた.崩壊率に関しては市販裏層材よりかなり大きな結果を示した.裏層材に関する規格値が存在しないため,どの程度の物性が得られれば望ましいとは言い難いものの,現時点ではキトサンの添加量が2wt%以内であれば,裏層材として使用に耐えれるものと考えられる,崩壊率に関してはアパタイト系裏層材では歯髄に対する活性を考慮した場合,大きな崩壊率もやむを得ないとの報告があることからも裏層材としての有用性があるものと考えられた. 続いて,液成分の改良に関しては,従来から報告されているようにリン酸4カルシウムならびにキトサンはカルボン酸と反応して硬化体を形成することから,本研究ではモノ,ジ,トリカルボン酸の中から代表的なカルボン酸を選択して練和液の主成分とした.さらに,各練和液の濃度は10、20、30%とした.その結果,今回用いたカルボン酸,具体的にはギ酸,酢酸などでは各練和液の濃度において硬化体を形成するすることが不可能であった.加えて,操作性が非常に悪い結果が得られた.粉液比に関しては前回の課題研究と同様の1.5 (g/g)で行ったわけであるが,粉液比に関しても再度検討する必要性があることが考えられた.また,液成分に関してはそれぞれのカルボン酸単体で使用するのではなく数種類のカルボン酸を混合して使用する必要があることが考えられる.いずれにせよ,液成分の改良に関してはさらなる検討が必要であることが示唆された.
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