本研究の目的は、顎関節雑音を定量的に解析法し、顎関節内部の機能診断の一助とすることにある。これまでに、雑音波形の分析は時間一周波数解析法がもっとも有効な手法であることを報告し、それを二次元的に表示する段階に至っている。そこで本年度では、時間一周波数解析の中でもエネルギー分布が比較的表現しやすいSTFTに着目し、雑音波形の三次元表示とその臨床応用の可能性について検討をおこなった。その結果、以下のような研究実績となった。 I、顎関節雑音分析システムの改良 ソフト面の改良点は、二次元解析データをもとに陰線消去法を応用した三次元パワーアレイ表示を完成した。これにより、開閉口運動時の雑音波形の変化を時系列に観察することが出来た。また、ハード面の改良点は、CPUをグレードアップすることにより、一回の解析時間を6分から約20秒へと短縮し、解析の高速化を可能とした。 II、被験者への応用 被験者は、臨床所見およびMR画像より顎関節部に相反性クリックを有する顎関節内障群と異常を認めない健常者群を対象とし、各群における三次元パワーアレイ表示の総エネルギー値の比較を行った。その結果、円板の転位量が多くなるにつれて、総エネルギー値は大きくなり、健常者群と顎関節内障群との間では明かな差を認めた。 このようなことから、顎関節部の機能診断に雑音波形を用いることの有効性が示唆された。
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