研究概要 |
TMDの病因については数多くの研究が行われており,病因に対する寄与因子については多因子であるという説が有力である.しかし,その中に咬合因子の関与を否定する論文も多くみられ,TMDに対する咬合の役割を,正しく評価する必要性がある.そこで今回,TMD(鍔関節症)にたいする咬合の役割について検討すると共に,咬合の臨床的評価を確立する目的で研究を行った.咬合の病態は,形態的と機能的なものに分類され,その中で本研究は機能的な異常に着目しGothic Archにて評価した.そして,Gothic Archの結果を,各々の臨床症状および画像診断と対比し検討を加えた.被験者は3人で女性3名,平均年齢34.4歳,鍔関節内障1人,MPS 2人である Gothic Archの検討項目は 1.タッピングポイントとアペックスの位置関係:一致 0人,不一致3人 2.前方運動経路:直線 0人,彎曲 3人 3.タッピングポイントのばらつき:あり 2人,なし 1人 TMD患者のGothic Archを検討した結果,3症例全てに前方運動時に左右鍔関節の非協調性運動が生じており,さらにタッピングポイントとアペックスの位置関係に相違が認められた.これらは,鍔関節内の器質的な病態がないMPS症例において鍔関節内障と同様な結果が得られたことにより,咀嚼筋の疼痛が下鍔運動に大きく影響していることが示された.しかし,本研究結果は直接的に咬合との関連を明らかにするにはいたらず,より詳細な検討を必要とする.今後も症例数を増やし検討を続ける所存である.
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