放射線治療後の骨に対して、適切な骨移植時期を知るために、ラット頭頂骨へ放射線照射後骨移植を行い組織・形態的に検討を行った。その結果、放射線照射によって血管形成および未分化間葉系細胞の増殖が障害されるため、初期の新生骨形成が遅延して骨癒合が遅れることが示唆された。さらに、放射線照射後に骨移植を行った場合の血管形成の障害とその回復過程を明らかにするために、メルコックスによる血管鋳型法を用いて走査型電子顕微鏡により観察を行った。その結果、移植後1週目の初期には、対照における血管および新生骨は母骨および移植床を被うように広い範囲に形成されていたのに比較して、照射2週目移植群では血管および新生骨の形成範囲は母骨上に限局しており両者は抑制されていた。照射後4週目移植群では、血管および新生骨は母骨および移植床の一部にも見られ、照射2週目移植群より良好で、時間経過により血管形成障害が改善することが示唆された。移植後2週になると各群とも豊富な血管および新生骨形成がみられ、移植後4週目には各群とも新生血管の整理統合により血管径は均一となり、血管数の減少および新生骨の吸収が見られた。放射線照射後早期に骨移植を行った群では、血管新生が悪いため移植後初期の新生骨形成に遅延が生じることが示唆された。さらに、放射線照射による血管新生の障害は、時間の経過によって回復することが明らかとなり、これが新生骨形成障害の回復に寄与していることが示唆された。以上の結果から、放射線照射後に骨移植を行う場合、少なくとも照射後4週以上の血管形成障害が十分回復するまでの時間経過を必要とすることが示唆された。今回は、放射線照射による新生骨形成の障害と血管新生について研究を行ったが、血管内皮細胞をはじめとした細胞レベルでの放射線と血管新生との関係について研究を行う上での基礎となった。
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